第6報の以前、England へ出国の前日、都心で勉強会を終えて時差調整のために徹夜で準備する。電子機器は、Mac、Windows、Linux、iPhone、Android、日本語キーボード、ペンタブレット、会議システム、type-C の充電器、電源タップを持った。日本の電源プラグへの変換器を忘れた。それから知人が見送ってくれ、羽田空港へ向かう。日頃出発時刻の2時間前に行くようにしている。しかしこの日は見送ってくれる知人の都合で3時間の余裕があった。国際線は第3ターミナルに決まっている、そう思い込んでいた。何も案内を見ずに慣れ親しんだ第3ターミナルへ向かい、掲示板から自分の飛行機を探すために e-ticketを確認すると、私の飛行機は第2ターミナルに来ると書いてある。ANAを予約したからだいつも謎の海外路線を使っていたからこんなことは起こらなかった。ANAは海外行きでもANA専用の第2ターミナルに停まることがあるから気をつけよう。2時間前を目安にしていたら少し危なかった。
ロンドンのヒースロー、とかいう日本でいうところの成田っぽいよくわからない空港まで14時間の飛行時間だ。隣のおじさんは一睡もせずに映画を見続けている。イン・ザ・ヘッド、というディズニーの映画が字幕付きなので私もつい一緒に見てしまう。音は聞こえないが。あとは寝たり、歩いたり、論文を読んだりしていた。外は山脈や雲海が広がっていたりする。これがモンゴルか?などと思っていた。
しばらく寝て、外が明るいのでまた窓を覗くと、一面の雪原が広がっていた。この高度で雪原なわけはない、これは氷河だ。あそこに行ったら必ず死ぬだろう、絶望的な光景だ。なんだあれは、機内の現在位置案内サービスを確認してみたら、グリーンランドだった。おかしい、私は北極付近を東周りに通ってきたのか、ロシアの上を通過するのではなかったのか。外交上の問題だろうか。
現在16時UTC+1、イギリスなのにUTC+1、しょうもない夏時間だ。UTCを味わうには冬を待たなければならない。それで、空港に到着したら外貨を獲得する。羽田空港でも一応交換しておいた。羽田は1 GBP = 206円だったが、ヒースロー空港は1 GBP = 240円だった。海外の方が率が良いと、インドネシアに行った時、羽田の両替所で忠告されたから、今回は海外に到着後主に換金しようとしたらこのざまだ。ところでGBPはGreat British Pound の略だ。検索しても出てこない迷惑な名前の単位だ。Greatはどう考えたって必要ない。8万円分両替して、Nottingham へ向かう。
まずはNottinghamへ行く方法を調べよう。そこらへんにいる人に尋ねると、どうやらNottinghamへはロンドンの中心地まで電車で行き、そこから機関車へ乗り換えて北上しなければならないらしい。そのためのチケットをまとめて売ってくれるというから、おお、そうしてくれと頼んで、2万円払った。さすが、イギリス、物価が高いな、と納得して払ったけど、後で聞いた話、8千円で行けるらしかった。私はなぜあんなに大金を払ったのか、謎が残った。
電車の乗り換え地点を歩きながら、イギリスのサンドイッチを試食する。600円だ。めちゃくちゃ高くてめちゃくちゃ不味い。噂通りイギリスのご飯は美味しくない。気をつけよう。駅のホームはハリー・ポッターの舞台そのものだった。9.75番線に突っ込みたくなるだろう。そこから汽車に乗って、時間がかかるだろうから派手に眠っていると、乗り過ごして終点のノッティンガム(Nottingham)から折り返した駅で降りることになった。
すっかり夜になった。21時だ。降りた街、Beeston(人間になりたかった猫、に出てきそうな地名だ)の駅で待っていると、フィリピン人を名乗る女の人が話しかけてくる。色々話してくる。Nottinghamまで一緒に電車に乗った。私の家の場所を聞いてくるから、最初警戒したが、まぁこの人間なら対抗できるだろうと思い教えたところ、その場所は荒れているから、タクシーで行けと、タクシー乗り場に行ってタクシーを拾ってくれた。私が最後タクシーに乗ると、去っていこうとするので、この人は本当に私を助けてくれたのかとその時ようやくわかって、お礼をよく伝えた。
家に到着した。ドアに穴が空いていて、中が見える。ここが私の滞在場所のようだ。家の前の鍵箱に鍵が入っていると大家が言っていた。少し探してみると、ドアの横の鍵のかかっていない箱を開けてドアの鍵を手に入れることができた。開けて家に入ったら、ドアの鍵が閉められない。一時間考えても閉められない。2日後に答えを出すのだが、それまで鍵は開けっぱなしで寝ることになった。スラム街みたいな場所でさ。蜘蛛の巣が張っていて、ベットにネズミの糞が転がっている。ベットの下はゴミだらけだ。予算の範囲だとここしかった。私みたいな公僕にはちょうどいいだろう。部屋の掃除から始めることにした。