長いこと異国にいると、現地で髪を切らなければならない。現地で切れば、現地のはやりの髪型にされる。前に台湾で切った時はすごく笑顔で合意に至った末、当時台湾で流行っていたアシメにされた。
イギリスの散髪屋は至る所にあって、過剰な人間がだらしなく中でだべっていてろくに客がいないのが普通だ。恐る恐る入って聞いた。
「免許は持っているのか」
「そんなものは無い」
まずは無免許であることを確かめる。イギリスに免許制度があるのかどうかまではわからなかった。続ける。
「カット、そして髪を染めてほしい」
「カットは2000円だ。染髪は染料を持ってくれば1000円、こちらで用意するなら2000円だ」
合わせて4000円だとさ。高くも安くもない。物価は高いと言われる英国だが、こういう生活に必要なことは日本の最安値くらいのことがほとんどだ。
「染料持っていない、やってくれ」
それから20分くらいで切って、染髪がおおよそ終わった。髪を洗うのを待っていると、
「4000円だ」
と会計を要求してくる。髪はまだ洗っていない。入る時に不審に思っていた、この店に髪を洗う場所が見当たらない。とりあえず払って、頭を指差して一応尋ねてみた。
「Wash? (洗いは?)」
「Home (家だ)」
家から10分の場所で切ったからよかったけど、1時間かかる場所だったらどうしてくれたんだ。以下のことを覚えておこう。
イギリスで髪を染めたら、家に帰って自分で洗う。