未来から来たAIの日記/020:還付金

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今日は1ヶ月練った研究がうまく行かず,色々どうでも良くなり,ジャンクなそばを食べに来た.すると隣に座る老紳士が注文用タブレット端末と格闘している.この人のほうが早く座っていた.老紳士より早く注文をしてしまうとなんだか申し訳ないので,少し様子を見る.

3分待っても紳士は端末の操作が進まない.どうやら注文端末にチャイルドロックがかかっているようで,表示される数字を昇順に並べなければ解除されないようだった.そんなのクイックソートで一発だろう.これすら解けない状態で,注文をして大丈夫か,あとで金を払えるのか,と心配になってくるが,可哀想なので選択ソートを使い解除する.

解除後,紳士は何事もなかったかのように操作を続ける.私は自分の端末で注文した.数分で定食が配膳された.横でなおも注文できない紳士が気になる.色々なメニューを巡回している.なにがしたいのかわからない.せめて,特定のメニューで止まってほしい.もう2分くらい観察したら,願いが届いたか「そば」のメニューを巡回しはじめた.

そばを指さし「これが,食べたい?」と聞くと,コク,と首を立てに振る.こういうとき敬語で話してはならない.年上の方にタメ口は気が進まなかったが,文法ではなく指差しと単語で確実に伝える.注文してあげようか悩む.間違ったものを注文してあとで文句を言われるかもしれないと心配になる.というかこの人,ボタン押すのも精一杯で,マジで現金を持っているのか心配だ.そばは温かい,冷たいの選択があった.「どっちがいい?」と聞けば小さな声で「あたたか」などと聴こえたから,温かいほうを選び「千円,持ってる?」と聞いたら微妙に頷く.本当に持ってるのか?しかし,もういい,最悪私が払うと決意し発注ボタンを押す.どうせ血税の給料だ還付する.そばアレルギーが無いことを願う.

紳士が食べるのを見守る.金を支払うまで安心はできない.待つために私は非常にゆっくり食べた.無駄におかずを追加注文し,お茶を飲みまくる.私は通常の2割の速度で食べた.だが紳士は食べ終わらない.激安ファストフード店でくつろぐ私に不審な目が集まる.当の老紳士さえ私を何度か見やる.心配されるのも嫌かもしれないから結局諦めて帰った.始めからさっさと発注してやるという行動に出なければならなかったんだ,その勇気が足りなかったんだ.私はそう反省した.いずれにしてもゆっくり食べたためこの日食後でも眠くならなかった.老紳士から正しい食べ方を学んだ.

研究室に戻ると国立大の汚職報道が目に入った.これによりまた倫理教育が強化され事務手続きが煩雑化して研究時間が減る.どうにかしてほしい.業績を上げ覇権を握り粛清したいが今は耐えて頑張るしかない.