菊道日記/003, 学生の面倒

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新学期が始まる.研究を進めなくてはならん,だが契約上授業を行わなくてはならない.毎年初回のガイダンスは満身創痍で嫌々向かうのだが,いざ学生を目の前にすると,キラキラした顔が眩しくて大変だ.子供たち,元気だったか?と言いたくなる.今年こそは手抜き授業にしようと思っても,顔を見ると元気が出るから,結局一生懸命工夫したオリジナル課題を作り出し,学生から苦情を出されるのだ.

大学生というのは全く子供である.反応が素直だ.例えば10秒でも筋が見えない喋りをしようものなら途端に眠り始める.とっておきの話題を出せば内職をやめて真剣に話を聞き始める.この様子を見るためにわざわざ対面で授業やってるんだ.伝わっているかどうかよくわかるからさ.「素晴らしい示唆に富んだお話をお忙しいところ誠に感謝いたします.こちらの不勉強が多いために完全には理解しきれていないのですが,大変勉強とさせていただきました.」などと学生は言わない.単に,わからないです〜,というのだ.

ところでこれ,
「わからないです〜」
をどのように発音するか知っているだろうか.教職に就くまで私はわからなかった.しかもこれをメールのときだけ打ってくるやつが居て,ずっと読み方に苦労していた.

の楽譜で説明する.私が子供の頃アニメなどで知っていたのは,第一小説の発音だ要するに「で」と「す」の間に「〜」が来るはずだったから「わからないです〜」のように「〜」が最後に来たときは語尾の処理に悩んだ挙句,第2小節のように頭の中で解釈していた.それから教員になって2年目くらい,学生に話しかけた時のこと.
「どうだ,課題できてるか?」と聞いたら,
「わからないです〜」
と能天気に言うから,これか!と感動した.発音はの第3, 4小節を参考にしてほしい.再現度に自信はないけど.

Musescoreで作った「わからないです〜」の説明譜表.音程が広くテンションが高いように思うが,平均律の音程に最小値が存在することで分解能に制限がありそれに合わせると音の高低が大きくなった.旋律は周波数空間で移動不変だとはよく言われているが,縮尺に関しても意味は変わらなそうだとこのとき思った.旋律に音程は重要でないかもしれない.

音源もいかに掲載する.

どこでこんな気の抜けた語尾を覚えてきたんだ.確かにカオスな音程で「わからない」雰囲気出てるけどさ.でも譜表見る限り音楽的には豊かになっている.何気ないことでも楽しむという姿勢に感心する.

大学生は大人だから彼らとは敬語で対等に接するべきだという意見があるが,私はそうは思わない.少なくとも学部生に敬語は使わない.その代わり面倒は見る.そして私が小さい頃,大人になれば汚いことばかりに手を染め純粋さを失うのだと言われていたが,自分を見ても周りを見てもそうは思わない.あの教えは一体何だったんだ別に何も変わりはしないだろう.まぁ,今は戦争が無い時代だから変わらないで居られるのか,わからんが,下の世代の面倒を見るやつが,大人なんだと思うよ.