菊道日記/002

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今日留学生が世界のアニメ流行状況を説明してくれた.これだ.流行の上位を占めているのは愛と勇気を語るような作品だ.平和に貢献してるだろう.私の世代の人間なら,漫画を読んでいれば親に頭が悪くなるからやめろと怒られた経験があるだろう.実際のところ,馬鹿になるということはまったくなく,どこの国でも漫画の話で話題ができるし,漫画に触れた経験が芸術的感受性の基礎を作ってくれたと言える.辛いときに主人公たちの立ち振舞に勇気づけられた経験は数しれない.

そして,私の姉が偉大な漫画家となり,その作品がアジアで流行している.それに対し漫画がなんの役に立つんだ,私は窒素を固定し空気からパンを作り出すような生活に役立つ偉業を達成するんだ,と言い科学者になった.しかしさっきのページの統計を見て,5ヶ国語で翻訳され数10万部印刷される作品を出した姉のほうが現状どう考えたって世界平和に貢献している.外交という面で,私はせいぜい研究室に来る留学生とホームステイに来る友達の相手をできる程度だ.10万人に伝えた何かが有りはしない.

私も15歳のとき漫画家になりたいと思ったことがあった.そのとき絵の練習をして,200枚くらい描いたけど模写をするのが精一杯で生成モデルには至らなかった.そしてCOVID-19が流行したとき,久しぶりに描いてみようと思い,20分/1枚で30枚くらい練習した.絵を描く能力は研究で役に立つから,多少時間を使って描いてもいいだろうと思い練習したのだ.に結果を示す.

描いた結果,カラスは随分首が回るんだ,ということを知った.

Archlinux, kritaに,Wacomの5000円くらいのタブレットをつないで描いた.Linux で絵がかけるんだ.同じように実物を姉に描かせたら写真にしか見えなかった.30枚と一日数十枚×10年の人間では勝負にならない.時間が足りないと思い私は絵の練習をこれで諦めた.

これを無我夢中で続けている人間たちは,これで外交をしようなどと考えていないだろう.それでも明らかに外交で役に立ち,世界共通で話せる話題を一つ増やしたのだ.文化の違いや,生活環境の違いがあるのだから,絶対に伝わらないと思っていたが,そんなことはなかった.ランキングには出ていないが学園モノでさえ面白いと言っている友人が居る.一度も国外に出たことのない人間が描いたものが,世界で読まれている.これは非常に興味深い結果だ.

何が役に立つかわからないものだ.何でもかんでもやってればいいとは思わないが,例えば砂糖を食べているだけで社会問題は改善しないが,私は少なくとも漫画が生活の役に立たないと思っていたから,この点間違っていた.なにか作ることには,他人を感動させられる程度は難しいとは思うけど,少なくとも1つ,今は変な作品に思えても10年後に見返したときに心温まる,という価値がある.